データ
モデル名:ベヒシュタイン モデル名 model.E(280cm)
製造年:1924年製
製造国:ドイツ ベルリン製
張弦方法:総一本張り
フロント側:総アグラフ
ピン仕様:オープンフレーム
アクション仕様:シュワンダー 連結式アクション
ペダル:2本
鍵盤:88鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)
外装:黒艶(おそらく修復外装)
今回は待っていた方も多いと思うスタインウェイ、ベーゼンドルファーと並び世界三大ピアノの一台と言われているベヒシュタインを収録してきました。個人的にはこの『世界三大ピアノ』とか言う根拠もない呼び名は好きではないのですが、ようやく上記3メーカーが聴き比べ出来るようになりました。
正直に告白すると自分は戦前のベヒシュタインが最も好きなピアノです、この好みはここ5年ぐらいこの活動をしている間数多のピアノを見て弾いてきましたが揺らぐことはありませんでした。そして今までベヒシュタインを動画にしたかったのですが第28回まで遅くなってしまった理由は自分が納得できる『本物の』ベヒシュタインに出会うことが出来ないからでした。今回はようやく念願かなって1924年製の現役のベヒシュタインのフルコンサートピアノを収録できることとなりました。
ベヒシュタインと一言で言っても年代によって全く性格が異なります2000年代からの現代のどうしようもない楽器はカウントせずに、19世紀から第二次大戦までの戦前型、大戦後から1990年代までの戦後型がありどちらも面白い楽器ですが真にベヒシュタインらしいのは戦前型でしかも創業者カール・ベヒシュタインが生きていたころの楽器は本当に素晴らしいです。
ただ高張力(張力=弦を張る力)により独自な音質を作っている楽器の特性上、金属フレームへの負担が大きくフレームが壊れている個体が少なからずあり古いベヒシュタインの良個体は探すのは非常に手を焼きました。
さぁそんなベヒシュタインですが何と言っても最大の特徴は『音の立体感』と『中立性』でしょう、不思議なほど音が濁らないんです、かと言って音が伸びなくて残響が少ないかと言われればそんなことは一切なく本当に不思議な楽器です。あまりに音が整然と響くので実に音楽がクリアに聴こえます、今まで聴いていた曲が全く違う側面を見せてくれるのです。特にこの傾向はベヒシュタインを愛好していた作曲家(リスト、スクリャービン、ドビュッシー等)を弾くと顕著に出ます。
ドイツピアノ特有のコクはベヒシュタインにはほとんどありません、逆にドイツピアノからはほとんど感じられない色気や艶があります、これは創業者がフランスのピアノメーカー『パプ』で修業をしていたことに由来していると思います。ちなみにベヒシュタインとプレイエルは同じ工房でピアノ作りを学んでいました。
弾き心地はというとシュワンダーの連結式アクションは非常に優れたリニア性を発揮しており演奏者のタッチにピッタリと寄り添ってくれます。
2時間という短い収録時間でしたが思う存分ベヒシュタインを楽しませていただきました。
堂々とした佇まい、非常に凛としていて格好いいピアノである。薄いペダルボックスはベヒシュタインならではのデザイン。
鉄骨構造は高音部の太い部分が印象的である。ベヒシュタインの高張力を支えるための生命線である。
ベヒシュタインといえば当然オープンフレームと総アグラフの組み合わせである。総アグラフ構造が音の立体感に寄与しているのは間違いない。
フルコンサートピアノのE型は総一本張りである。それ以外の機種は通常張弦になる。
低音側の終端が直角に尖っているのが戦前型の証。
支柱は弦と並行に張り巡らされている。いかにベヒシュタインは響板だけを鳴らすように工夫しているかが見て取れる。
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