データ
製造会社:西川ピアノ モデル名 ウェスタン model.No.2
製造年:推定1920年代製
製造国:日本 横浜製
張弦方法:通常張弦
フロント側:低音部 ベアリング 中音~高音部 プレッシャーバー
ピン仕様:総鉄骨
アクション仕様:イギリス式アクション
ペダル:2本
鍵盤:85鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)
外装:ウォルナット(修復外装)
今回は日本のピアノ製造黎明期にヤマハ、松本と共に御三家として名を馳せた西川ピアノのウェスタンを収録してきました。
西川ピアノは初代西川虎吉が1890年に日本で初のピアノを製造する、しかし当時、工作技術の不足により主要部品が輸入部品であった。その数年後、純然たる国産ピアノはヤマハが成し遂げることとなる。西川ピアノは販売店専用のOEMブランドが複数存在し今回のウェスタンもその一つである。
今回のウェスタンは虎吉の息子安蔵が設計したピアノである、安蔵は当時ピアノ製造の最先端であるアメリカで製造技術を学び帰国し虎吉の後を継いでいる。そんなこれからという時に西川ピアノに最悪の不幸が襲い掛かる。2代目安蔵が1919年に若くして病死、更に翌年1920年に初代虎吉が永眠。これが決定的となり1921年に西川ピアノはヤマハに買収される。ヤマハ買収後もOEM商品だけは元西川の工場で製造を続けていたが1930年代にはそれも終わり西川ピアノの系譜は完全に潰えてしまった。このウェスタンは恐らく製造番号からヤマハ買収後すぐの個体かと思われるが西川安蔵が設計した音を色濃く残す一台となっている。
さてまず弾いてみた第一印象は非常に歌心のある音色で鳴りも上々で今の国産ピアノでは聴くことのできない音。特に中音域の鳴りが素晴らしく、それに対し調整の影響もあるだろうが低音側には少々の物足りなさを感じたが中音域の鳴りが格段素晴らしいのでそう感じただけでそこらのピアノよりしっかりした音が鳴っています。
アクションは恐らくヤマハと同様のものが使われており弾き心地は上々。響板が良くなるので弱音のコントロール性も非常に良好です。
そのあまりに短い創業により非常に製造台数が少なく稀少な西川ピアノを存分に楽しませていただきました。
※ 今回の収録に当たり楽器を動態保存している豊島区の全面的な協力 により実現することが出来ました、この場を借りてお礼申し上げます。
非常にシンプルだが洒落たデザイン色々な箇所に職人の技が光っている。
ウェスタンのプレート。ヤマハ買収後の楽器には『日本楽器製造株式会社』の表記が並列されているがこの楽器にはそれが無い。しかし製造番号は買収後のものと思われるので買収後すぐの過渡期のものだろうか。
低音側のピン周り。ベアリングを採用している、恐らくあまり使わない音域のせいもあるだろうが最低音域は弦が馴染んでない感じがある。
下側の前板、なんとトーンエスケープが設けられている。これにより格段に音の抜けが良くなっているはずである。当時はピアノは超高級品、外見も非常に重要なのでこういった機能も見えないところにさり気なく作るあたり流石である。
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