モデル名:アウグスト・フェアシュター モデル名 不明(185cm)
製造年:1922年製
製造国:ドイツ レーバウ製
張弦方法:通常張弦
フロント側:低音~中音 アグラフ、次高音~高音 カポダストロバー
ピン仕様:総鉄骨
アクション仕様:ヘルツ式ダブルスプリング
ペダル:2本
鍵盤:88鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀 )
外装:黒
動画URL:https://youtu.be/lW10Lzf1guQ(2022年1月5日公開)
撮影協力:More Sounds様 https://moresounds.co.jp/
今回は国内では貴重なアウグスト・フェアシュターを収録してきました。 普段お世話になっているMore Soundsの調律師の三矢さんから面白い楽器が入ったとのご連絡をいただいたので立川の工房までお伺いさせていただきました。
まずは日本では一般的とは言えないアウグスト・フェアシュターの解説から。
アウグスト・フェアシュターは1859年にドイツの極東でポーランドとチェコの国境付近であるレーバウにてアウグスト・フェアシュターが創業したメーカーです。会社は順調に発展を続け1897年に初代のアウグストが亡くなると2代目に息子のツェーザルが就くとザクセン王国御用達ブランドになります。第一次世界大戦中の1915年にツェーザルが亡くなるとツェーザル夫人のマルガレーテが指揮を執り無事苦難を乗り切り1920年代に入るとツェーザルの息子であるマンフレッドとゲルハルトが当時最先端であった四分音ピアノや電子音響ピアノを他社に先立って発明しアウグスト・フェアシュターの名声は頂点に達しました。第二次大戦では工場は戦禍を逃れるも連合軍に占拠されてしまいます。1945年にチェコスロバキアが国境を取り戻すと第2工場がチェコスロバキアに国有化され世紀末までFörsterブランドでピアノを作りましたがドイツのレーバウで造られた本家のものと次第に品質の格差が生まれます。1949年にドイツが東西分裂すると1952年にマンフレッドが1966年にゲルハルトが亡くなり1972年に会社が完全に国有化されるとヴォルフガング・フェアシュターが会社の指導にあたります。1989年にドイツが統合され会社が民営化されてから現在までヴォルフガングの娘であるアネカトリンの指揮の下現在でもレーバウで手造りでピアノを製造しているメーカーであり、国営化時代も含めずっと創業家であるフェアシュター家が維持し続けている稀有なピアノメーカーです。
今回の楽器は1922年のアウグスト・フェアシュター最盛期の一台です。パッと見た印象は豪華なフレームが目を惹きますが細部にこだわりの見れる楽器といった印象です。
鳴らしてみると典型的なドイツピアノの音がします。アウグスト・フェアシュターの特色としては鳴りの豊かな低音と木目調の独立性の良い高音が印象的でとても素朴な雰囲気があります。メジャーなドイツメーカーのような強烈な個性はありませんが非常に味わい深い音がしています。アクションは現代的なヘルツ式のものが搭載されており今の楽器と何の遜色もなく演奏することが出来ます。
『More Sounds様』貴重な楽器を十分に楽しませていただきました。
シンプルな透かしの譜面台が印象的。メーカーロゴは飾り文字が多い当時の他社と比べてもモダンでシンプルなデザイン。
鉄骨のデザインはいたってオーソドックス。装飾はかなり凝っており、このサイズで天板のロック機構が搭載されているのは非常に珍しい。
アグラフとカポダストロバー、ピン板の隠れたフレームといたって現代的な設計のフレーム。
フレームには1918年まで同地にあったザクセン王国の紋章が奢られている。
オリジナルの響板のデカール。レーバウの工場と後年チェコに国有化されてしまったゲオルグスヴァルデの工場が誇らしげに印刷されている。
フレームにはザクセン王国御用達と書かれている。
カポの裏側には独立したアグラフのようなパーツが取り付けられており高音部の独特なクリアーながら丸みのある音に一役買っていそうである。
ヘルツ式のアクション。この当時としては最新鋭のアクションである。
放射状の支柱。サイズの割に支柱の本数がかなり多く独自性が見て取れる。
Comentarios