ピアノ講座第3回【色々なメーカーの音色の作り方】

最終更新: 2020年10月13日

さぁ第3回ピアノ講座では前回お話しした前方弦と後方弦を各社どのように工夫して響きを作っているのか詳しく見ていきましょう!



1.デュープレックス・スケール


ピアノの構造

デュープレックス・スケールとは1872年にスタインウェイが発明した前方弦と後方弦を共鳴させ倍音を発生させ音色を豊かにする装置です。金属製のうまを前方弦と後方弦に噛ませることにより有効弦に対して完全五度上もしくはオクターブ上の音が鳴るように計算され設置されています。実際にデュープレックス・スケールを備えたピアノをお持ちの方は後方弦のとこに息を吹きかけてみてください、きっとわずかな音がすると思います。この僅かな音こそが有効弦の音に彩と煌きを与えているのです。現在のピアノでは豊かな音量や煌びやかな音が好まれるためほとんどのメーカーがこのデュープレックス・スケールを採用しています。しかしながら各社様々な音哲学に基づき調整を施し独自の音を様々なデュープレックス・スケールを用いて音色を作っています。


写真は各社のデュープレックス・スケールの違い。上からシゲル・カワイ、レーニッシュ、ゲール・アポロ、フォイリッヒ




2.アリコート・システム


ピアノの構造

アリコート・システムは1878年にブリュートナーが発明した、高音部に張られた4本目の弦のことです。この弦は通常3本張られている箇所の一番右側に張られておりハンマーで叩かれることのない弦で共鳴を目的として張られています。専用のチューニングピン、専用の駒とヒッチピンを備えており有効弦の音により共鳴したアリコート弦の振動までも響板にまで伝えようというものです。

上の写真を見てもらうと通常のピアノよりチューニングピンが多いのが分かると思います。このアリコート・システムも音に彩を与えるという基本的な考え方はデュープレックス・スケールと同じなのですが最大の違いはなんといっても『チューニングピンが備わっているので調律が出来る』ということです。これは固定式のデュープレックス・スケールとは違いアリコート・システムの調律によって微妙に音色を変化させることが出来ます。ただしその自由な調整幅がネックにもなっておりブリュートナーに不慣れな技術者には扱うのが難しい楽器でもあります。


ブリュートナー特有のアリコート・システム、専用の駒とヒッチピン、最高音部の駒は長駒と共用になっている。

ピアノの構造



3.エクステンド・ベース


ピアノの構造

これは通常88鍵であるピアノの最低音側に音域を拡張したものである。これは1909年にイタリアの作曲家で名ピアニストであったフェルッチョ・ブゾーニの依頼によってベーゼンドルファー社によって生み出された。登場当初は演奏目的であったがブリュートナーのアリコートシステム同様、拡張された弦が共鳴をし豊かな音色となったことから今では専ら共鳴用の目的で採用されている。

ブリュートナーのアリコートシステムとの最大の差はダンパーとハンマーが備わっているため音が出せる点にある。さらに低音側に音域を拡張していることから通常のピアノより大きな響板を備え共鳴させる弦が非常に太い巻き線なのも大きな違いである。常に一定の効果のあるアリコートシステムと違いこちらはペダルを使って弦が解放されたときに最大の効果をもたらします。開発したベーゼンドルファーのフルコンサートピアノであるインペリアルでは97鍵、また一時期のペトロフやエラールのフルコンサートピアノにも92鍵のモデルが存在していました。


写真はベーゼンドルファーのインペリアル、追加された9音にもダンパーが備わっているのが分かる。

ピアノの構造



4.有効弦以外を鳴らさない


ピアノの構造

ベヒシュタインを代表としたオールドスタイルのピアノによく見られます。前方弦、後方弦共にフェルトを張ることで共鳴を徹底的に防ぎ純粋な音作りを目指したピアノです。

混ざりけの少ないクリアで立体感のある音が作られる傾向にあります。




左から、プレイエル、1860年代のスタインウェイ、エラール、グロトリアン



第3回いかがだったでしょうか?各メーカー色々な方法で音色を作っています、特にブリュートナーのアリコートやベーゼンドルファーのエクステンドキーは独特の音響効果を持っておりその特性を理解して演奏する必要があります。あなたの家のピアノはどのタイプでしたか?構造を理解して弾くと本番で知らないピアノに当たっても大丈夫になりますよ!

次回はアップライトピアノについても見ていきましょう!


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