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執筆者の写真西野 智也

ピアノ講座第7回【ピアノの維持管理】

更新日:2020年10月13日

今回はピアノの良い状態を長く保つための維持管理方法を解説します。アコースティックピアノをお持ちの方は是非参考にしてください。


我が家のピアノルーム


1.設置環境

まず設置環境によって楽器の寿命は大きく変わります。以下の場所は楽器の寿命を酷く縮めますのでなるべく置かないようにしましょう。


・キッチンの近く。

理由は簡単です料理による油汚れは楽器には大敵です。また湯気による多湿状態はアクションパーツに不具合を起こす原因となります。長期的に見ると錆やカビの原因にもなります。

最近はキッチンとリビングやダイニングが繋がっている家が主流ですのでどうしてもそこに置かないといけない場合はカバーをかけて調理時はピアノを開けない、除湿器をかける等徹底する必要があります。恐らく年間通して過乾燥になることは少ないと思うので除湿に気を使ってください。下の写真は多湿によりカビが発生したピアノの支柱。

ピアノの維持管理


・海に面した部屋

オーシャンビューのお家にピアノは憧れますが楽器には過酷な環境になってしまいます。

問題なのは潮風による塩害です。ピアノには少なくない金属パーツが使われています。特にアクションの稼働部や鍵盤のウェイト、弦が錆びたり腐蝕したりすると修理に多大な費用がかかってしまいます。海に近い家の場合はなるべく海とは反対側の部屋に設置して脚まですっぽり覆うような厚手のカバーを掛ける等徹底した塩害対策を施してください。

下の写真は塩害により腐食したネジ。

ピアノの維持管理


・床暖房

恐らくピアノにとって最も良くない最悪な環境になります。エアコンやストーブ等と違い床から直に楽器が暖められてしまうので極度の乾燥により木材の割れにつながります。何より木が不要な収縮を強いられ多大なストレスがかかってしまい調律が安定しなくなります。そして最終的には響板の割れ、響棒の剥がれ、ピン板の割れ等深刻なダメージを負う可能性がかなり高くなります。これらの症状が出た場合修理するのに最低100万円は必要になってしまうでしょう。結論として床暖房のある部屋にはピアノを置いてはいけません、その部屋にしか置けない場合は床暖房を使うのは諦めましょう。下の写真は割れた響板(左)と響板からはがれ隙間が出来てしまった響棒(右)。




2.ピアノに良い環境を作ろう

ピアノにとって最も良い環境は室温は20±5℃前後、湿度は50±5%を年間通して維持できるのがベストです。特に日本の場合は梅雨~秋までの多湿の時期と冬場の乾燥に気を配る必要があります。楽器購入時に除湿器と加湿器をセットで購入することを強くおすすめします。除湿器、加湿器とも湿度を設定できるオート機能の物が便利です。特に冬場の乾燥が酷い場合は室内に観葉植物等を置くのもおすすめです。

また外装の劣化に繋がるので直射日光が当たる場合はカバーをかけた方が良いでしょう。

・我が家で現役稼働中おすすめの除湿器    ・我が家で現役稼働中おすすめの加湿器






3.普段のお手入れ

汚れを拭き取りたい場合は基本固く絞った水拭きで大丈夫です。埃を取る場合は静電気で取るタイプの柔らかい物を使ってください。薬品やアルコール系の染み込んだ物は塗装の被膜を攻撃するので使わないでください変色の原因になります。鍵盤も基本的には固く絞った水拭きで大丈夫です。象牙鍵盤などではコンパウンドが入ったクリーナーやアルコール系のクリーナーを使わないようにしてください象牙の割れや剥がれの原因になります。そしてピアノ使用後は天板と鍵盤蓋を閉じるよう心掛けましょう。



4.特別なお手入れ

季節毎のお手入れとしてカバーを掛けっぱなしの場合はカバーを外し蓋を開けてピアノ内を換気してください。ついでに掃除機でピアノ内の埃を吸いましょう。アップライトピアノでも下前板を外して中を掃除機で吸ってあげると良いでしょう。



5.定期的な調律

やはり定期的に調律をしてあげるのが何よりも楽器を長持ちさせます。調律師はピアノのお医者さんみたいなものです不調や故障のリスクも大幅に減らせます。最低でも使用頻度にかかわらず年一回は行った方が良いでしょう。



6.ピアノを弾く

楽器の調子を維持したいのであれば何より弾いてあげてください。ピアノは家や車と同じで使わなくなって放置すると途端に駄目になってさらに放置すると朽ち果ててしまいます。楽器は生き物です大事に使ってメンテナンスをしてあげれば人間の寿命より遥かに長い時間人々を楽しませてくれます。ぜひあなただけのピアノ大事にしてあげてください。



次回のピアノ講座は自分が今最も注目するピアノメーカーを2社を二回に分けてご紹介します。

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