大人の為のいまさら聞けないピアノの『いろは』第1回【座り方】
- 西野 智也
- 2020年10月7日
- 読了時間: 5分
更新日:2020年10月13日
●ピアノは座る姿勢が超重要です!!!
最近InstagramやYouTubeなんかでアマチュアやセミプロの方の演奏をよく見かけるようになりました。
そこで良く思うのですが座り方が間違っている人の多さ!!
特に高すぎる椅子や重心を意識していない人。共に重心が不安定でそれが原因でぶったたきによる音の汚い弾き手を多く見かけます。
そしてこの記事を書くにあたり色々なサイトに目を通しましたが大多数の初心者向けサイトには間違った奏法が平気で書かれています。
なので【いまさら聞けないピアノの『いろは』】第1回は正しい椅子の座り方を学んでいきましょう。
上の写真、左は椅子を最高に、右は最低(普段の高さ)にして演奏している写真です。
あなたの周りにもいませんか?左の姿勢で演奏している人。
結論から言いますと左の座り方では絶対に『良い音』は出せません。
ではなぜ左の座り方が駄目なのか下半身と上半身で分けて解説していきましょう!
1.下半身と重心について
上の写真は先ほどの写真に『重心の方向』、『体重の支点』、『足の姿勢』を分かり易く図式化したものです。
まずは右の正しい姿勢から見ていきましょう。
1.重心が真下に向いている。どっしりと腰で体を支えています。
2.体重の支点はほとんどが腰。かかとには足部分だけの体重の支点がある。
3.足に体重が乗っかっていないので自然に脱力でき足首に負担がかかっていない。
では左はというと
1.重心が腰からかかと方向に向いている。体をかかとと足の筋力で支えている。
2.体重の支点はほとんどかかと。腰にはほぼ体重の支点が無く椅子に寄りかかっている。
3.足は伸び体重を支えるための無駄な力が入っており足首を自由に動かすのは困難。
下半身を見るだけでいかに左の座り方が不自然なのかが分かります。特に問題となるのが
・上半身の重心が安定しないため腕が安定して使えない。
・足全体の筋肉が緊張する。さらに足のかかと部分に過大な負荷がかかっているので
足首の自由が利かずペダル操作が大雑把になる。
・ペダル操作時に足に体重が乗っているのでその重さがペダルにまで伝わりペダルに
過大な負荷をかけてしまう。最悪ペダル取り付け部の破損につながる。
もうここまででもお腹いっぱいですが引き続き上半身についても見ていきましょう。
2.腕と肘、手首について
上の写真は先ほどと同様に『腕の重さの支点』、『腕の位置』、『腕のエネルギー』を分かり易く図式化したものです。
早速右の図から見ていきましょう。
1.腕が鍵盤と肩でぶら下がる形になり自然に脱力できるので支点は肘と手首になります。
2.肘の位置が手首に対し水平に近い位置にあるので腕を下ろすだけでロスなく打鍵が
出来る。エネルギーのロスが無いので疲れずに弾くことが出来る。
3.肘と手首が自然と脱力できるので腕からの運動エネルギーを効率よく
鍵盤に対し垂直方向に変換し下ろすことが出来る。
では左はというと
1.腕全体が鍵盤と肩の間で突っ張った形で支えるため無駄な筋肉の緊張を生む。
腕の重さ(実際は上半身)を手首と指で支えることになり故障の原因となる。
2.肘の位置が手首より高いので腕のエネルギー方向を手首もしくは指で
下方向へと変換しているので腕の重さを効率的に使うことが出来ない。
3.肘の位置が高く伸びているので腕からのエネルギーを鍵盤に対して斜め方向でしか
使うことが出来ない。エネルギーの効率が悪いので指や前腕ひどい場合は上半身で
それを補おうとして音が汚くなり疲れやすい。
まとめてみると
・下半身が不安定なので腕で上半身を支えなくてはいけない。
・肘が伸びていることにより運動エネルギーを効率よく使えず無駄な力みを生む。
・腕が突っ張って脱力できないので難しいパッセージで効率的に腕を使えない。
・腕がしなやかに使えないので上半身の重さに頼ってフォルテを出し汚い音になる。
どうでしょうか?百害あって一利なしです。
そして他の初心者向け解説でよく見かける嘘なのですがピアノを弾くのに上半身の重さを利用する必要なんて全くありません腕だけで十分です。だって考えてみてください、たった50グラム程の鍵盤を1cm下げるのに上半身の体重が必要ですか?
美しいフォルテを出すのに必要なのは重さではなく打鍵の速さです、そして速さを出すには安定した重心と腕のしなやかさが不可欠です。
この弾き方は間違った奏法でもちゃんとした音が出てしまう腕の重みが全く必要ないデジタルピアノで練習している人に顕著にみられます。
実際に客席側で聴いてみると間違った弾き方の人の音は固く平面的で伸びが無いのでホールの最後列まで十分に音が飛びません。
3.ペダリング、足の位置について
では次に足についてみていきましょう。
例のごとく左が悪い例で右が良い例です。
問題は左足のポジションです重心が安定していないので左足を曲げて姿勢の支えにして全くシフトペダルを触らずに演奏する人を見かけます。
ピアノの基本姿勢は右足がダンパーペダル、左足はシフトペダルです。
ペダルの使い方は超重要ですので別の回で解説させていただきます。
そんな両ペダルを巧みに使いこなすには正しい姿勢は必須です。膝は目測で100度~120度位の角度になるよう椅子の高さと位置を調整してください。かかとでしっかり足を床に固定して人差し指の付け根当たりでペダルを踏みかかとを支点に足首のスナップで踏んでください。正しい座り方をしていればペダルに体重が乗ることは絶対にありません。

まとめてみると
・右足はダンパーペダル。左足はシフトペダルが定位置。
・ペダルは人差し指の付け根当たりで踏む。
・両足ともかかとをしっかり床に固定して足首のスナップでペダルを操作する。
何度も言いますが『座る姿勢』は超重要です!
体形や体格により正解の椅子の位置と高さは変わります。
腕と足がリラックスして自由に使えて重心が安定して座れるポジションを探してみてください。特にペダルの操作性と肘の高さを意識してみてください。
伸び悩んでいる方や良い音が鳴らせない方は一回原点に戻り座り方を見直してみてはいかがでしょうか?
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