データ
モデル名:松本ピアノ モデル名 特注の為無し(別名『宮様のピアノ』)
製造年:1944年製
製造国:日本 君津製
張弦方法:通常張弦(アリコート、デュープレックススケール無し)
フロント側:中音~高音部 プレッシャーバー
ピン仕様:総鉄骨フレーム
アクション仕様:イギリス式アクション
ペダル:3本
鍵盤:88鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)
外装:マホガニー(オリジナル外装)
松本ピアノ・オルガン保存会: http://matsumotopianohozon.livedoor.blog/
前回に引き続き松本ピアノ・オルガン保存会のコレクションからアップライトピアノの収録に移りました。この君津市が管理する保存会の倉庫には明治~昭和までの松本新吉、新治、新一の各世代が作ったピアノが10台以上保管してあります。
最初は日本ピアノの黎明期、コレクション最古モデル明治時代に新吉が作った一台を収録するつもりだったのですが他所で修復されており最悪なことにポリエステル塗装で塗り固められており酷く鳴りが悪くこの個体の収録を断念。
他のやつも現代のポリエステル塗装に変えられているものは見栄えは良いが音がどれも駄目、そんな中当時の雰囲気を漂わせる一台を発見。それが今回の別名『宮様のピアノ』と呼ばれる二代目新治が最後に手掛けたピアノでした。このピアノは三代目新一氏が修復を手掛け外装はオリジナルのまま中だけオーバーホールしたようです。
まずはこのピアノの歴史を、このピアノは太平洋戦争中の1944年に名前の通り皇族の朝香宮鳩彦王の木更津への軍人援護教育の状況視察に備え特別に製作された楽器である。 軍需産業が第一優先でピアノの製作なんて国内どこでも許されなかった時代に唯一製作が認められた一台である。 更に終戦後直ぐに新治が若くして亡くなっており新治最後のピアノとなっている、そんな特別な一台なのである。
そんな皇族献上品は美しい杢目の木を存分に使い装飾も施された一台、音も響板がしかっりとしており松本ピアノの『スウィートトーン』を体現していた。音はふくよかでどこまでも柔らかく伸びやか、鳴りも過不足なくもの凄くバランスの良い一台だった。
こちらの楽器はしっかり調整もされておりアクションもスムーズに軽めながらしっかりとしたタッチだった。
この楽器独自の時代や戦中の新治をはじめとした職人たちの特別な想いの詰まった濃密ながら素晴らしい一台だった。
皇族への献上品、戦中といえども外装から中身まで妥協は一切ない。ロゴマークがこの楽器だけ筆記体で記されており特注であることをうかがわせる。
当時としては珍しい3本ペダル。外装が当時のままなのが素晴らしい。
アクションは標準的なもの。フレームに一切の銘板が無いのが如何にも特注らしい部分。
見えないところの木材にも一切の妥協はない。側板の杢目を見ていただければこのピアノにかけた想いが伝わってくる。
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