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執筆者の写真西野 智也

【《ピアノを聴く動画》使用ピアノ紹介】第22回スタインベルク・ベルリン

更新日:2020年10月13日

データ

モデル名:スタインベルク・ベルリン モデル名 不明

製造年:推定1920年代頃

製造国:ドイツ ベルリン製

張弦方法:通常張弦

フロント側:低音~中音アグラフ 次高音~高音カポダストロバー 

      高音部アッパーブリッジ付き

ピン仕様:総鉄骨

アクション仕様:エルツ式ダブルスプリングアクション(ランガ―製)

ペダル:3本

鍵盤:88鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)

外装:マホガニー(修復外装)


今回は長野県へのピアノ行脚で収録してきた楽器を紹介します。

長野県の佐久穂町にある茂来館メリアホールに収蔵されている超稀少なスタインベルク・ベルリンです。今回の二泊三日の旅のメインはこの超貴重なピアノの収録にありました、昭和天皇即位を記念して当時東京京橋にあった『合資会社・外国ピアノ輸入商会』が3台だけ輸入したものの一台。

スタインベルク・ベルリンは1908年に創業し僅か29年しか会社が存在しなかった幻のピアノメーカーです。当時から高品質な楽器で定評があったようですが第二次世界大戦の折、ユダヤ人であった創業者がナチスから逃れるために工場を畳んでしまったようです。

ホールの真ん中に準備された楽器を弾いてみる、一番最初の印象は『何と柔らかな音の出る楽器だろう!!』と思いました。柔らかく音の伸びが凄く良いです、金属的な音がまるでせず何処までも木目調の珠の様な音。2~3分弾いただけでとても気に入ってしまいました、ベヒシュタイン的な珠の様な硬質な音だけどベヒシュタイン程艶やかではなくちょっと陰った雰囲気があります。低音の鳴りもどこまでも穏やかで音圧よりも音の伸びが感じられます、特に高音部が素晴らしい響きで本当に円やかで甘い音がします。

アクションも抜群の軽さとコントロールのしやすさが確保されており自由自在に楽器を歌わせることが出来ます。

わざわざ長野まで弾きに来たかいがあると思える本当に素晴らしい楽器でした。楽器自体の素性も良いのですが修復のされ方、楽器の保存状態も大変素晴らしく音楽ホールで現役で稼働していることに感動を覚えるとともに、これこそが本来のヴィンテージピアノのあるべき姿なんだと強く思いました。

スタインベルク

お洒落な譜面台に豪華なペダル装飾で高貴な佇まいの楽器。鍵盤蓋の右側にはこの楽器が昭和天皇の即位を記念して輸入されたものである証のプレートが付けられている。

スタインベルク

『御大典記念』と書かれた特注プレート。昭和天皇が御即位した際に記念で輸入された証。同様のピアノがあと2台岡山と京都にある。

スタインベルク

総鉄骨仕様でフロント部分にアッパーブリッジを採用している。設計自体にスタインベルク・ベルリン独自のものを見つけることは出来なかった。

スタインベルク

ヒッチピン側では倍音を作らないようにフェルトが張られている。


スタインベルク

響板のデカール。わずか32年の操業ながら数々の授与メダルがプリントされている。


スタインベルク

当時のヨーロッパではかなり珍しい3本ペダル。ペダルボックスの形状が厚みが薄く、横長で独特の形状をしている。装飾パネルも美しい。

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