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【《ピアノを聴く動画》使用ピアノ紹介】第50回ベーゼンドルファー


モデル名:ベーゼンドルファー モデル名 model. 290 インペリアル(290㎝)

製造年:1910年頃製

製造国:オーストリア ウィーン製

張弦方法:交差弦 総一本張り

フロント側:低音~次高音 アグラフ、高音 カポダストロバー

ピン仕様:総鉄骨 オープンフレーム

アクション仕様:ダブルエスケープメントアクション

ペダル:2本

鍵盤:97鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀 )

外装:黒艶出し

動画URL:https://youtu.be/HaSh60iTSvY(2022年10月5日公開)

撮影協力:ピアノプラザ群馬様 https://www.pianoplaza.com/


今回も引き続き『ピアノプラザ群馬』様で非常に珍しい初期型のベーゼンドルファーのインペリアルを弾いてきました。 ベーゼンドルファーのフラッグシップモデルであるモデル290『インペリアル』はイタリアの作曲家でピアニストであったフェルッチョ・ブゾーニが自身の作品で更なる表現を求め最低音の拡大を求められ作られたものです。 開発初期は92鍵でしたが最終的に97鍵まで拡大されその設計は現代まで受け継がれています。今回のインペリアルはそんな97鍵になった最初期のモデルと思われます。残念ながら何れかのタイミングでの修復により製造番号が消されてしまい残っておらず内部に遺された「1910」の鉛筆による手書き跡のみがこの楽器の製造年を推察させる唯一の手掛かりとなっております。しかし楽器の白いままの最低音の拡大鍵盤、中心からずれたロゴ、引張式のペダルなど1900年代初期のインペリアルの特徴が見受けられるのでほぼ初期型のモデルで間違いないと思われます。 まさにブゾーニが生きていた時代のインペリアルその第一印象は『見た目も音も堂々としてとてつもなくスケールの大きい楽器』でした。全体の鳴りは勿論、インペリアル特有のその低音の轟加減と言ったら他のメーカーでは味わえない唯一無二のものです。 インペリアルは低音側が拡大されている関係上、通常のスタインウェイ等の88鍵のフルコンサートピアノに比べて低音側が鳴りすぎてしまい音のバランスが特殊であり非常に気を使います。使いこなせれば非常に効果的なのですがこれは慣れが必要です。音の印象は明るく軽い戦前のベーゼンドルファーらしいウィンナートーンを聴かせてくれます。アクションも軽く弾き易いのですが何か手に慣れない感触を感じよく観察してみると、なんと鍵盤の側面まで象牙が奢られているではないですか!?木に比べ耐摩耗やグリッサンド時に摩擦係数の観点で有利なのであろうが何とも自分には感触が悪く好きになれなかった。この年代のウィーンの楽器にはこの仕様の鍵盤があったようだが残っていないのをみるに恐らく当時のピアニストからも評判が良くなかったのであろう。 そして何よりこのピアノの最大の欠点は拡大された鍵盤が白色なのと中心からずれたロゴが何とも気持ち悪いのである。現代のインペリアルではすべて黒く塗られ88鍵外の音を視覚的に分かり易く差別化してくれている、またロゴもこのピアノでは97鍵の中心に置かれているせいで自分がずれた位置に座っている感覚になりなんとも居心地が悪いのである。ちなみに現代のインペリアルではこの点も右側にオフセットすることで88鍵での中心にロゴが配置され演奏者への錯覚を軽減する措置がされている。こんな試行錯誤による時代の変遷が見れるのも初期型のモデルの楽しみの一つでもある。 音に関しては文句無しなのですが長年染みついた感覚との齟齬に大分苦しめられる楽器でもありました。

『ピアノプラザ群馬様』貴重な楽器を十分に楽しませていただきありがとうございました。


ベーゼンドルファー

インペリアルはとにかく大きい!! 角の多いケース形状、引張式のペダルがいかにも旧時代然とした雰囲気を醸し出している。そしてロゴが97鍵の中心に配置されているのが分かる。

ベーゼンドルファー

特徴的なインペリアルのフレーム。残念ながらフレームが現代のベーゼンドルファーと同じ色に塗り替えられてしまっている。この時代のベーゼンドルファーは第24回の色がオリジナルである。


ベーゼンドルファー

旧式ピアノ然としたフロント部分。調整式カポダストロバーと総一本張りの弦、剥き出しのピン板の組み合わせ。


ベーゼンドルファー

低音側に九音拡大された鍵盤がインペリアルの証。最初期のインペリアルなので低音側が現在の様に黒く塗られてなくて弾いていると感覚が狂って弾き難い。


ベーゼンドルファー

引張型のペダル部の付け根部分。ここもフォルテピアノ由来の部分。


ベーゼンドルファー

低音弦側の駒。通常のピアノより9本も低音弦が増えているので駒も巨大。


ベーゼンドルファー

鍵盤の断面。なんと側面まで象牙が張られている。正直タッチは木の方が良い。


ベーゼンドルファー

ベーゼンドルファーといえば堅牢な井桁の支柱。


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