【ピアノ演奏温故知新】では過去の偉大なるピアニストとその奇跡的なピアノ演奏を数多くご紹介していきます。
第13回はリスト直系のピアニズムにより20世紀初頭のベートーヴェンの権威『フレデリック・ラモンド』をご紹介します。
フレデリック・ラモンド(1868~1948)
略歴
1868年スコットランドのグラスゴーに生まれる。オルガニストの兄からピアノを習う。
1882年にフランクフルトのホッホ音楽院でマックス・シュバルツにピアノを師事。
マックス・シュバルツを通してリストの高弟ハンス・フォン・ビューローに師事。
1885年からビューローの勧めにより晩年のフランツ・リストに2年間師事。
1888年サンクトペテルブルクにてアントン・ルビンシテインとリサイタルを開く。
1904年に女優のアイリーン・トリーシュと結婚。ベルリンに居住を構える。
1917年ハーグ音楽院の教授に任命される。
1923年アメリカのイーストマン音楽学校の教授に任命される。
1938年ナチス政権から逃れるため家族とともにイギリスへと逃れる。
1940年グラスゴー音楽アカデミーで教える。
1948年イギリスのスターリングにて死去(享年80歳)
ラモンドの代名詞ベートーヴェン
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 作品13『悲愴』
演奏スタイル
ラモンドの演奏は非常に温かくどこまでも自然で美しいものです。今日ベートーヴェンやリストをこんなに優しく美しく演奏する演奏家はいません。ラモンド自身が『純粋さ、真実、単純さ』を大事にしていると語っている通り、そこから聴こえてくる音楽にはわざとらしい誇張や奇をてらったものは全く存在しません。本来その曲の持つ自然な美しさだけを私たちに示してくれています。
遺された少ないレパートリーはベートーヴェンとリストがほとんどを占めています。ショパンやブラームスなんかも演奏会で弾いたようですが残念ながら録音はほとんど遺っていません。
リストの直弟子ラモンドによるリスト演奏
リスト:3つの演奏会練習曲より『ため息』
同時代の人物による評価
1912年12月5日のコンサートの『Times』紙の批評
『ラモンド氏がベートーヴェンのソナタを弾く時、批評家はその語彙の中から演奏に相応しい言葉を見つけることは叶わないでしょう。ベートーヴェンの真実だけを聴き、まさにたった一度限りの真実を聴いたと感じて我々がホールを去るからです。』
1937年2月7日のコンサートの『DeTijd』紙による批評
『彼はリストを非常に美しく演奏しています!大騒ぎせずに。ラモンド氏は偉大な音楽家だけが持つ力を発揮し、音楽に平和を吹き込み、静かな鋼の指で軽快にパッセージを演奏し、音楽が何であるかを完全に理解し、それを高尚で卓越した演奏によって魅力的に証明しました。』
ラモンドの格言
ベートーヴェンの音楽を演奏するには
『ベートーヴェンの素晴らしさを初めて世界に伝えているかのように、自分なりの方法で演奏してみてください。ベートーヴェンの音楽をより崇高なものにするために、単なるピアニストにはならないでください。』
ラモンドの素晴らしい詩情あふれる演奏
リスト:愛の夢 第3番
関連商品紹介
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