【ピアノ演奏温故知新】では過去の偉大なるピアニストとその奇跡的なピアノ演奏を数多くご紹介していきます。
第23回は19世紀最後の象徴的なピアニストと呼ばれた『ロベール・カサドシュ』をご紹介します。
ロベール・カサドシュ(1899~1972)
略歴
1899年フランスのパリで音楽一家の長男として生まれる。
1903年に叔母のローズ・カサドシュにピアノの手ほどきを受ける。
1913年にリストの弟子であるルイ・ディエメの下で学び始める。
1916年に最初の作品を作曲する。
1917年パリで最初のリサイタルを行う。
1921年同じディエメ門下のギャビーと結婚し以後デュオとしても活動する。
1922年ラヴェルと会い彼の作品について貴重なアドヴァイスを受ける。
1924年パリで初めてラヴェルの作品だけを演奏するリサイタルを行う。
1927年後に有名なピアニストになる息子ジャンが生まれる。
1932年息子ガイが生まれる。
1935年イシドール・フィリップの後任としてフォンテーヌブローのアメリカ音楽院でピアノのクラスの主任を務める。トスカニーニ指揮の下アメリカデビューも果たす。
1941年アメリカカーネギーホールでの最初のリサイタルを行う。
1942年娘ジノが生まれる。長年デュオを行うヴァイオリニストのフランチェスカッティと出会う。
1946年フォンテーヌブローのアメリカ音楽院の院長に任命される。
1963年初来日。
1972年息子ジャンが交通事故で亡くなる。フランスの音楽祭で最後のコンサート出演。その後体調を崩し9月19日に亡くなる。(享年73歳)
貴重なカサドシュの演奏動画
ドビュッシー:沈める寺
(使用ピアノはスタインウェイ)
演奏スタイル
カサドシュの演奏は非常に清潔感のあるフランス的な洗練されたものであり同じディエメ門下であったアルフレッド・コルトーとは非常に対照的なピアニズムを示しています。
ピアニストであると同時に作曲家でもあった彼は非常に楽譜に忠実でその鋭い洞察力と豊かな音楽性から楽曲本来の美しさを引き出すことに成功しています。
カサドシュは多くのレパートリーを持っていましたがとりわけフランス音楽や彼が終生愛していたモーツァルトでは大変素晴らしい演奏を聴くことが出来ます。非常に録音にも恵まれたピアニストであり膨大な量が遺されています。ソロだけでなく奥さんであるギャビーと協演したピアノ・デュオやヴァイオリンの名手フランチェスカッティとの共演も歴史的な名演に含まれます。
カサドシュの美しいモーツァルト
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第17番 ニ長調 K576
同時代の人物による評価
モーリス・ラヴェル(作曲家)
『あなたは作曲家です。なぜなら、私が思い描いたように『絞首台(夜のガスパール第2曲)』を演奏する勇気があるからです。これは遅い作品であり、退屈だと言っても過言ではありませんが、そのように演奏する必要があります。そして、名手ピアニストはそのように演奏したくありません。彼らはテンポを2倍にし、それをはるかに速くします。だからあなたは作曲家だと思います!』
ジャン・ロイ(音楽評論家)
『ロベール・カサドシュは、彼の明晰さ、簡潔さ、謙虚さによって、アンドレ・ジッドによって「不要なものは何もない」と解釈される古典主義なフランスの芸術家の真のモデルです。』
デヴィッド・デュバル(ピアニスト)
『カサドシュは絶対的なフランスのピアニストだった。彼のピアニズムは伝統的なバランス、自発的サウンド、スタイル、および高度な技術を有していました。彼の音は上等なシャンパンの様に、さわやかで、軽く、そしてはじけていました。カサドシュは洗練された音楽家であり、そのピアニズムは驚異的にしなやかでした。彼のレパートリーは広く、ペダルの使い方は驚くべきものでした。』
作曲家が認める演奏
ラヴェル:夜のガスパール(朗読付き)
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