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執筆者の写真西野 智也

【ピアノ演奏温故知新】第8回ラウル・コチャルスキ

更新日:2021年8月24日

【ピアノ演奏温故知新】では過去の偉大なるピアニストとその奇跡的なピアノ演奏を数多くご紹介していきます。

第8回はショパンの流儀に最も近いピアニスト『ラウル・コチャルスキ』をご紹介します。



ラウル・コチャルスキ(1885~1948)

コチャルスキ
 

略歴

1885年ポーランドのワルシャワに生まれる。

1888年に4歳でワルシャワのプライベートサロンでデビュー。この時のプログラムにはすでにショパンの小品がふくまれていた。その後ロシアでコンサートツアーが組まれる。

1891年7歳にしてペルシャの宮廷ピアニストに任命される。

1892年から1895年までショパンの弟子であったカール・ミクリに師事。

1893年までに各国王室などから18のメダルや勲章を授与される。

1894年までに作品50を超える曲を書きそのうち15作品は出版もされていた。

1896年にドレスデンで1000回目のコンサートを行う。

1910年ショパン生誕100周年のリサイタルをヨーロッパ全ての首都で行う。

第2次大戦中にナチス・ドイツに抑留され。著名なポーランド人として政治利用される。

1945年にポーランドに戻るが戦中にナチスの為に演奏したために人気が無くなっていた。

1948年ポーランドのポズナンにて心不全で亡くなる。(享年64歳)

 

ショパンのピアノを使ったコチャルスキの記念碑的ライブ録音

ショパン:ノクターン第8番、ワルツ第1番&子守歌

(使用ピアノはショパンが生前所有していた1847年製プレイエル)

 

演奏スタイル

コチャルスキの演奏スタイルはショパンの弟子ミクリ直伝の流麗なスタイルにあります。

コチャルスキの代名詞となっている自然で品のあるテンポルバートに注目されがちですが、彼の凄さは軽やかな真珠のような音を奏でるタッチにこそあると思います。

儚かさすら感じる即興性やエレガントながら決して行き過ぎることのない歌いまわし、堅実なテクニックとショパンを弾くのに必要な要素を全て兼ね備えている。

さらにバックハウス同様に同時代のショパン弾きに比べて非常に楽譜に忠実な演奏をしている点も今聴いても古さを感じない理由の一つだろう。

文献によるとレパートリーは広かったようだが限られた少ない録音ではその全貌をうかがい知ることは難しい。

幸いにもショパンに関しては主要作品の数多くを録音に遺したのでショパン直系のピアニズムを楽しむことができる。

 

ショパン直系コチャルスキによるノクターン

ショパン:ノクターン 第2番 作品9-2『ショパン直伝の変奏付き』

 

同時代の人物による評価


1935年10月19日ドイツ紙Völkischer Beobachterの批評

『コチャルスキはショパンの音楽を正しく伝える最も重要な一人』


1893年2月17日ベルリンのDeutscheReichs-Anzeiger紙の批評

彼の素晴らしく高度なテクニックと彼の大きく強いタッチよりもはるかに素晴らしいのは、知的な解釈、慎重なフレージング、そして演奏中の彼の興奮を特徴付ける自発的なテンポルバートであり、常に作品の内容に対応しています。


ステファン・キシレフスキー(ピアニスト・作曲家)

『彼の演奏はもう古くさく、完全に過去の流儀に感じるようなものだったにもかかわらず、最上級に美しくまろやかなタッチ、一貫性のある洗練されたテクニック、均整の取れた集中力と閃き、そのすべてが私たちに彼の流儀を忘れさせ、本物のピアノ演奏芸術という喜びを教えてくれたのです。』


コチャルスキの格言

ショパンにおいての『厳格なリズム』について

『これは、リズムの加速または減速が禁止されているという意味ではありません。それどころか、特定のメロディーフレーズでは、それらが推奨される場合があります。』

 

貴重なコチャルスキのショパン以外の録音

シューベルト=リスト:菩提樹

 

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