モデル名:シュタイングレーバー モデル名 model.162(162cm)
製造年:1903年製
製造国:ドイツ バイロイト製
張弦方法:通常張弦 デュープレックススケール有
フロント側:低音~中音域 カポダストロバー 次高音~高音域 アッパーブリッジ
ピン仕様:総鉄骨フレーム
アクション仕様:エルツ式ダブルスプリング(おそらく非オリジナル)
ペダル:2本
鍵盤:85鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)
外装:黒艶(修復外装)
動画URL:https://youtu.be/YH8mXGGa6jw(4月1日20時公開)
アプラウスミュージック:https://applausmusic.com/
今回は2020年に北高崎でオープンしたばかりの出来立てほやほやの音楽サロン『アプラウスミュージック』さん所蔵の1903年製シュタイングレーバーを収録してきました。 キャパ35名のお洒落なホールに風格漂う小型グランドピアノが鎮座しています。
ウィーンで学ばれたヴァイオリニストでサロンの代表でもある篠原郁哉さんが音にこだわって選定した楽器。
『とても不思議な感じがして、なかなか手強い楽器ですよ』と篠原さんに言われ俄然燃える自分がいます(笑)
さてファーストインプレッションですがちょっと弾いてみて瞬時に分かりました。『尋常ではない』鳴りです。見た目はどう見ても小型グランドなのですが低音の鳴りが2メートル級の楽器スタインウェイが大人しく思える程の音圧と深みです。はっきり言って【鳴りの良いピアノ】は散々弾いてきたつもりでしたが小型でこんなパワーのある楽器は初めてです。正直頭が混乱するレベルです【見た目は小型、音はスタインウェイのB型(211㎝)】どこぞのアニメみたいなキャッチコピーですがいい意味で完全に見た目詐欺です。
いつもは小型ピアノはこのシリーズではプレイエルやエラールなんかがそれに該当しますが限られた音量の中でニュアンスで勝負するみたいなところがあるのですが・・・このシュタイングレーバーは余裕の鳴りでじゃじゃ馬を乗りこなす感さえあります。
じゃあ音量だけの楽器なのかと言えばそこは流石のシュタイングレーバー温かく懐の深い音を奏でます。高音域は低音に対して若干の控え目な味付けでスタインウェイのようなキラキラした現代的な音ではなくあくまで正統なドイツピアノの音です。音の成分である硬さや柔らかさ、太さや伸び等様々な要素が非常にバランスよくスタインウェイやベヒシュタイン等の様に一瞬で分かるような特徴やキャラクターは音自体にはあまりないのですがトータルバランスが非常に優れた音には品の良さを感じます。
アクションは恐らくオリジナルではない現代式のものが組み込まれていると思われる弾き心地でアンティークピアノ特有のリニアで敏感なコントロール性はほとんど無く若干重みと深さを感じますが気にはならない程度です。
今一番自分がお気に入りの現役メーカーの一つであるシュタイングレーバーは最新モデルで感じた実直な楽器作りというものが100年以上昔から全く変わっていないということに嬉しさを覚えたと同時にこのメーカーはもっと一般に認知されるべきだと強く感じました。
是非皆さんも自分の感じた『不思議な感覚』をアプラウスミュージックさんで体感してみてはいかがでしょうか?
小さいながら凛とした雰囲気を感じる佇まい。全体的に直線的にデザインされていて非常にモダンな印象を受ける。
通常のピアノより高音側のケースのくびれが浅く小型ながら低音弦の弦長の確保と響板の面積拡大の役割を担っている。これはシュタイングレーバーの小型ピアノ独自の設計で現在のモデルでも見ることが出来る。
アグラフを全く使わないシュタイングレーバー独自の設計思想が見て取れる鉄骨のフロント周り。低音側でカポダストロバーを採用しているピアノメーカーはかなり珍しい。
逆に高音側は鉄骨に抉れがありカポではなくアッパーブリッジによって有効弦を張っている。この年代のグランドピアノでアッパーブリッジを使っているのはかなり珍しい。
上記のアッパーブリッジを近くから見た写真。高音部はフレームに弦が触れていないのが良く分かる。
こちらも非常に特徴的な部分、駒が三か所に分かれている。低音弦と巻き線部分と芯線部分で駒が3分割されている。恐らく小型ピアノでもしっかりした低音を出すための工夫と思われる。
支柱は真っすぐ一本だけ入っている。支柱構造はいかにも小型ピアノと言った雰囲気。ピアノの心臓部である響板の裏側に驚きの設計が隠されていた。なんと本来柾目に対して直角に張られる響棒がケースに対して平行に張られている。
柾目と響棒が直角でないのが分かる。こんな設計はこのピアノ以外では見たことが無い。今まで見てきた独自設計の結晶が小型とは思えぬ鳴りに繋がっているのだろう。
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