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執筆者の写真西野 智也

【《ピアノを聴く動画》使用ピアノ紹介】第31回エラール

更新日:2021年9月10日

モデル名:エラール モデル名 model.№1(212cm)

製造年:1909年製

製造国:パリ製

張弦方法:総一本張

フロント側:低音~中音域 アグラフ 次高音~高音域 プレッシャーバー

ピン仕様:総鉄骨フレーム

アクション仕様:エラール製ダブルダスケープメントアクション

ペダル:2本

鍵盤:85鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)

外装:(オリジナル外装)

カフェ・プレイエル:https://cafe-pleyel.com/


第31回は【ピアノ探訪第8回】でご紹介した上高地の玄関口である新島々にあるカフェ・プレイエルさん所蔵のエラールです。

ピアノを聴く動画第18回】で取り上げた楽器はエラール晩年の交差弦タイプの比較的モダンなタイプでしたが今回はエラールらしさがより強い平行弦タイプのモデルになります。

以前からこの楽器はピアノを聴く動画に絶対取り上げたいと思っていたほど惚れ込んでいた一台でありこのシリーズも25回を超えたあたりから楽器探しが難しくなりつつあったので第30回以降はメーカー被りありの方針で色々な名器を紹介しようと考えていました。

そうした訳でこのエラールは第31回に秘蔵の一台として満を持して登場させたわけです。

まず第一印象はその美しすぎる外装でしょうローズウッドかウォールナットと思われる外装に徹底的に施された象嵌が非常に上品で派手過ぎず凛とした佇まいをしています。

ケースは直線を基調にフォルテピアノやチェンバロの様な形状をしており蓋を閉じるとモダンピアノには見えない雰囲気です。

音の方も負けず劣らずの美しさです平行弦特有のクリアで混ざらない響きがエラール特有の音の軽さと明るさに拍車をかけています。アクションもエラール独自のものが搭載されており羽毛の様に軽く弾き心地は最高でいくらでも早く弾けそうな気を起させるほどです。

しかしこのピアノは写真で見たらわかる通りダンパー装置が下側についています。これが非常に厄介でして現代のピアノの様なリニアな効きはありません。なのでこのピアノ特有のペダリングを要求されます普段はハーフペダルを多用するのですがこのピアノだと音が完全に止まらず濁りの原因となっていしまいました。そこでペダルを極力減らし指を使ったオーバーレガート等を駆使して弾いてみると何とも言えぬ美しい響きが生まれてくるのです。

こうして純然たるエラールをたっぷり弾いてみると往年のフランス人ピアニストがプレイエルやガヴォーでなくエラールを支持する訳が良く分かります。フランスの風土や文化といった空気感を最も強く出してくれる楽器だということが強く感じることが出来ました。

奏法的にはフランスからほど遠いロシア奏法の自分ですがそんな空気感を動画を通じて感じていただければ幸いです。

エラール

直線を基調としたデザインながら非常に優雅さを感じさせる佇まい。流石お洒落の国フランス見た目も音も一切の妥協が見られない。


エラール

非常に旧式然としたフレーム形状である。写真では写っていないが響板の柾目も弦同様の方向になっている。総一本張りを採用しておりヒッチピン周りには消音用のフェルトが張られている。


エラール

このピアノの最大の特徴である下向きのダンパー(消音装置)が見て取れる。ダンパー自体も非常に小型なものが搭載されており現代ピアノの感覚でペダルを扱うと全く音が止まらない。


エラール

蓋を閉じてもこの象嵌である。ここは演奏中には全く見えない箇所であるが一部の隙もない程の見事な装飾である。


エラール

当然支柱は井桁になっている。写真を撮ってはじめて気づいたのだがペダルの裏側まで象嵌が奢られている。相変わらずの変態的(誉め言葉)装飾である。

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